死の瞬間、体には何が起こっている? 生きている状態と死んでいる状態の違いとは

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人が死ぬ瞬間、体の中では何が起こっているのでしょうか。なぜ生き物は死に、一度死んだら生き返ることができないのでしょうか。人間はあらゆる宗教や古代の神話から現代の映画に至るまで、死と復活の話に魅了されてきました。過去には生命に宿る特別なエネルギーを信じる「生気論」や魂の存在について語られてきました。現在の理解では細胞とエントロピーの法則に関係があることがわかっています。(TED-Ed2014 より)

スピーカー
Randall Hayes (ランドール・ヘイズ) 氏
参照動画
At what moment are you dead? – Randall Hayes

生きている人と死んでいる人の違いとは

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ランドール・ヘイズ氏:人間が存在したはるか昔から、私たちは死と復活に魅了されてきました。世界のほぼすべての宗教でそれについて語られていますし、古代の神話から最新映画の中まで、死者は生き返り続けているのです。2でも死者は本当によみがえるのでしょうか? 生きている人と死んだ人では実際何が違うのでしょうか? 死を理解するには生を知る必要があります。古代の理論には生気論があります。3それによると生きていること自体が素晴らしいのです。なぜなら生命の本質を成す特別な物質やエネルギーに満たされているからです。それは気や血液や体液と呼ばれ、その本質は世界共通で信じられてきました。また様々な方法で他人の命を奪う生き物の話や若返らせる魔法の話は今でもあります。417世紀におこった科学革命のために、生気論は西洋では廃れ始めました。ルネ・デカルトは人間の体は基本的に機械と変わらないけれど、脳の松果体にある神が創造した魂により、命が与えられたと展開しました。51907年ダンカン・マクドゥーガル医師は魂の重量を主張し、それを証明するために死の直前直後の患者の体重を量りました。生気論同様この実験は疑問視されましたが、彼の理論は今でも話題に上ります。6

死んだ生物が生き返らない理由

これらの信ぴょう性に欠ける理論は何を教えてくれるのでしょうか? 現在の理解では、生命は魔法の物質やきらめきによってもたらされるのではなく、機能している生物学的プロセスそのものに命があるということです。これらのプロセスを理解するために個々の細胞レベルまで掘り下げる必要があります。7細胞それぞれの中では絶えず化学反応が起こっています。グルコースと酸素の働きにより体の中でATPと呼ばれるエネルギーを運ぶ分子が作られます。細胞はそのエネルギーを使って、修復、成長そして生殖まで、あらゆることをします。必要な分子を作るのには大量のエネルギーが必要となりますが、それ以上に、分子を必要とされるところに運ぶのには更なるエネルギーが必要です。8エントロピーの法則では、分子は高濃度から低濃度の場所へ無造作に拡散したり、より小さな分子や原子に分解していくのです。細胞はエントロピーの増大を常に抑制する必要があり、生物学的に機能するために複雑極まりない構造で分子を維持するためにエネルギーを使っているのです。すべての細胞がエントロピーに屈したとき、この配置が壊れるので結果的に死をもたらします。wwこれが、生物が一度死んでしまうと簡単に生き返らない理由です。肺に空気を送り込んでも呼吸サイクルの多くの作用が機能していないので蘇生しません。同様に、除細動器の電気ショックでは停止した心臓を動かせません。でも、正常に機能していない心筋細胞を同期して正常な心拍リズムに戻すことができます。これで死を防ぐことはできるかもしれませんが、死体や、死体を縫い合わせたモンスターを起き上がらせることができるわけではありません。ですから、様々な医学的な奇跡により死期を遅らせたり回避することはできても、甦らせることはないのです。9しかしこれも単純なものではありません。なぜなら、常に進化し続ける技術や薬品のおかげで、以前なら死んだとみなされていた状態を、回復する見込みのある昏睡状態と診断することもあるのです。将来回復の見込みはさらに延びるかもしれません。動物の中には生物学的プロセスの速度を停止寸前まで落とすことによって寿命を延ばしたり、厳しい環境でも生き延びるものもいます。10人体冷凍の研究ではそれと同様に、死に瀕している人を凍らせ、のちに新しい技術を使って助けられる段階で生き返らせようと試みています。細胞を凍らせると分子はほとんど動かず、実質的に拡散は止まります。人間の細胞プロセスのすべてが破壊されたとしても、マイクロロボットですべての分子を正常な位置に動かし、同時に全細胞にATPを注入することでひょっとしたら生き返るかもしれません。凍らせたときの状態に戻っておそらく体は動き始めるのです。11ですから生命を魔法の煌めきではなく、物凄く複雑で自己永続化する組織の状態だとすれば、死とはこの危ういバランスを崩すエントロピーの増大プロセスなのです。誰かが完全に死んだ瞬間は一概に定義されていませんが、現時点で制御可能なエントロピー増大量に左右されているのです。

 

出典元:logmi

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