「身じまい」のおと 昔の葬儀にはもう戻らない?

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日本葬送文化学会の2月例会が東京都内であって、冠婚葬祭業「メモリアグループ」(岐阜県大垣市)の松岡泰正代表が講演した。2000年に創業したまだ若い会社。「ありがとうのお葬儀」をキャッチフレーズに業績を伸ばしているらしいが、この「業界」の実態に関する話は興味深かった。

 いま全国で業者が執り行う葬儀は(1)一般葬(2)家族葬(3)直葬(4)ゼロ葬−−の4種類。16年前、同じ岐阜県内の人口2万4000人の小さな町で会社を始めたときは、葬斎場での(1)が当たり前だった。ところが、1990年代後半から出始めた、こぢんまりとした(2)家族葬が、急速に増えているという。

 ごくわずかな遺族だけが集まる(3)直葬のことを、松岡代表が初めて聞いたのは4年ほど前。「火葬事情がよくなくて葬儀まで時間がかかる東京ならではの話」だと感じていたが、しだいにニーズは増えていった。一昨年春、遺族も集まらずにそのまま合葬墓に入れられる(4)のことを聞いて「ウソだろ!」と思っていたが、半年後にはその地域でも「葬儀なしで」の要望が出始めたという。

 代表の話が興味深いのは、

<(1)→(2)→(3)→(4)>

 という流れが、「加速度的に進んでいる」実感だ。業者が葬儀を取り仕切るようになったのは70年代とよく言われるが、<(1)→(2)>の移行が約20年かかったのに対し、<(2)→(3)、(4)>の流れは、ほんの数年で進んだという。しかも、「不可逆的だ」と指摘する。おじいさんの家族葬に満足してもらっても、おばあさんが亡くなったとき喪主の息子が、人をたくさん呼ぶ一般葬で行うかといえばそうでなく、さらに簡素なスタイルになっていく。矢印は常に<→>。だから不可逆的なのだ。

 私が永代供養・合葬墓を初めて取材したのは、90年代の初めだった。未婚で、墓地を持ちたくても承継者がいなくてなかなか持てない女性たちがいた。当時はそうした人たちを「救いたい」という運動でもあった。それがいまでは、新聞の折り込みチラシに「家族葬=10人プラン」「新規募集=永代供養墓」などと当たり前に書いてある。

 3年前、私が「終活」に関する特集欄を持ったとき、まず取り上げたのが「直葬」だった。なんだか切ないな、と感じたから。そのころ、首都圏でそんな味気ない葬送スタイルが増えていると京都のお坊さんに話したら、東京は大変ですなあ、と笑われもした。

 ほんの数年で、日本の葬送は加速度的に変化している。しかも、不可逆的に。もうたぶん、昔には戻らない。

 ムラ(地域社会)にもイエ(家制度)にもカイシャ(社葬)にも縛られない。日本人の葬儀はいま、都市部でも地方でも、ワタシ(個人)の手の中にある。あとは自分が「あの世」を信じるかどうか。信じなければお坊さんも必要ないか……。

出典元:毎日新聞

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