またスタートラインに立てるように

12141577_962838257109741_1507010200393986419_n

毎日が光り輝く夏休み。楽しくて仕方ない夏休みの苦痛は「読書感想文」が書けないこと。
真っ暗になるまで外で遊んでいた私にとって、感情を整理整頓させること程苦痛な作業はなかった。

9歳夏の課題図書は「西の魔女が死んだ」(梨木香歩著)
(死ぬ話なのか…うわぁ、嫌だ…)
出来ることなら、蓋をしたまま放置したかった。

その物語の主人公は、女の子特有の人間関係に疲れた中学生「まい」
学校へ通うことを身体が拒み、西の魔女(まいの「おばあちゃん」)のもとで「魔女修行」をしながらひと夏過ごすことになった。

魔女と言っても、「ビビデバビデブー♪」なファンタジックなものではない。
自然を上手に取り入れている生活の知識や知恵に長けている、ちょっと先の未来がわかる人のこと。

まいは、家の裏山に自分だけの場所を見つけ、収穫した食材でジャムを作り生活する中で元気を取り戻した。
まいは、おばあちゃんとの暮らしを愛おしく感じていた。

 

ーーーー

 

私の一番古い記憶も、大好きだった「ひぃおばあちゃん」との思い出。

 

90歳越えだったひぃおばあちゃんは事あるごとに
「ばぁばはもうすぐ動かなくなるの。動かなくなったら、今度はお星様になるからね。お空から萌ちゃんのことを見守っているからね。」
と3歳の私に話してくれた。
「人間はお星様にも変身できるのか!」セーラームーンになりたかった少女には刺激だった。

 

数か月後、彼女の身体は動かなくなった。
大人たちは、悲しい顔で涙を流していた。

 

3歳の私は、何が起こっているのかよく理解できなかった。

 

誰かに呼ばれ廊下を歩いていると、奥からひぃおばあちゃんが笑顔で歩いてきた。

 

「あ、ひぃおばあちゃん!!」と嬉しそうな声をあげる私に対して、周りの大人達はぎょっとした顔をしながら辺りを見回す。
彼女はいつもと変わらない様子で「しばらく会えなくなるけど、毎日を楽しく生きるのよ。」そんなことを私に話しかけ、スッと見えなくなった。

今思えば夢だったのかもしれない。
けれども、確かに彼女はそこにいて、私に微笑みかけていた。

 

ーーーー

 

主人公まいも死に対して疑問を感じていた「人は死んだらどうなるの?」
おばあちゃんは「死ぬ、ということはずっと身体に縛られていた魂が、身体から離れて自由になること」だと答える。

 

人は身体と魂が合わさってできている。身体は生まれてから死ぬまでの付き合いだけれど、魂はもっと長い旅を続けなければならない。
西の魔女は、まいが怖がらない形で魂が脱出できたことを知らせた。
ひぃおばあちゃんも、私が寂しがらない形で魂を手放したことを知らせた。
西の魔女は、毎日を丁寧に生きることが大切だとまいに伝えた。
ひぃばあちゃんは、毎日を楽しく生きることが大切だと私に伝えた。

 

「大切にしたいこと」が受け継がれると、魂は上手に脱出できるのかもしれない。
私も、上手に魂を脱出させてから、死にたい。いつ死んでも後悔しないように「小さなことに喜び続けたい。」

 

定食屋さんで相席になった赤ちゃん連れご夫婦と、隣に座る好きな人の顔を見比べながら、そんなことを思った。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

コメントは利用できません。

ページ上部へ戻る